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法学部で広がる未来の自分の可能性                               ~第16回~学んで支える地方自治「地方自治概論」

流通経済大学法学部で学べるのは、法律学だけではありません。政治、行政の仕組みや地方自治について学ぶ科目もあります。とりわけ自治行政学科で学ぶ学生たちは、政治?行政?地方自治にかかわる科目をバランスよく修得しながら、地域が抱える問題とその解決策について考える力を養っています。今回は、自治行政学科の一年生にとって必履修科目となる「地方自治概論」担当の田中雅子先生(自治行政学科)にインタビューをします。「地方自治概論」の講義ではどのようなことを勉強するのか、お話を伺いたいと思います。


―――田中先生、本日はよろしくお願いします。はじめに先生が担当されている「地方自治概論」とは、どのような科目なのかを教えてください。
田中:こちらこそよろしくお願いします。まず具体例からお話をしたいのですが、私たちの日々の暮らしは、様々な公共サービスに支えられています。朝起きて顔を洗うときに使う水道、ごみの収集、通勤や通学で使う道路、災害や事件に遭遇したときの119番や110番など様々なものがありますが、これらを利用しない生活は考えにくいですよね。

―――確かに水道や道路を使わないで生きていくことは難しいですね。
田中:ええ、ではこうした公共サービスの担い手は誰かというと、国と地方自治体ということになります。公共サービスは、国と地方自治体が役割分担したうえで私たちに提供されているのです。

―――地方自治体というのは都道府県や市区町村のことですよね。
田中:そのとおりです。そして私が担当している「地方自治概論」は、まさに都道府県や市区町村を中心に地方自治の仕組みを理解し、自治体の活動がどのような制度に基づいて行われているのかを学ぶ科目になります。

―――地方自治の仕組みを学ぶということですが、地方自治の仕組みとは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか?
田中:たとえば、流通経済大学の所在する茨城県龍ケ崎市と千葉県松戸市には、それぞれ市長と市議会議員がいますが、それぞれの関係について考えたことはありますか?

―――あまり詳しく考えたことはないのですが、やはり市長の方が偉いということになるのでしょうか…
田中:市長と市議会議員は、ともに住民の直接選挙で選ばれており、両者の間に上下関係はありません。首長と議会が相互に監視とチェックを働かせる「二元代表制」という仕組みです。時々、市議会議員の上司は市長、と誤解する人がいるのですが、そうではないのですよね。

―――そうだったんですね。地方自治概論の授業では、「二元代表制」のような仕組みについて学ぶことができるということなんですね。
田中:はい。二元代表制は、地方自治概論で学ぶ地方自治の仕組みの中でも、特に重要なものになりますね。

―――ありがとうございます。ところで、現在のような地方自治制度は、いつからあるのですか?
田中:良いご質問です。「二元代表制」は、GHQによる占領期に民主化政策の一環として首長公選が命令され、既にあった議会と結びついて戦後始まったものです。戦前の知事は内務省を中心とする中央官庁から派遣されていて、選挙で選ばれた人ではありませんでした。また、そもそも憲法に地方自治が規定されたのも、日本国憲法が制定されてからです。

―――国と地方の関係は随分と変化してきたのですね。
田中:そういうことになりますね。「地方自治概論」の授業では、このような地方自治制度の歴史についても解説するようにしています。

―――それはとても面白そうです。では次の質問ですが、現在、自治体が抱える課題にはどのようなものがあるのでしょうか?
田中:自治体によって課題はそれぞれ異なりますが、日本全体が直面している問題として、少子高齢化があります。「消滅可能性都市」という言葉を聞いたことはありますか?

―――うーん、聞いた記憶はないけれど、都市が消滅するなんて、SF映画みたいですね。
田中: そうですよね。「消滅可能性都市」とは、2020年から2050年にかけて20~39歳の若年女性人口が5割以下に減少すると予想される自治体を指します。民間の有識者会議が2014年に行った提言の中で用いられた言葉ですが、10年後の2024年にも新たなレポートが発表され、人口減少に警鐘を鳴らしています。

―――自分の住んでいる自治体が消滅してしまうかもしれないと聞くと、少し怖くなってきますね。
田中:自治体に危機意識をもってもらうために、あえて強い言葉を使っている面もあるかと思います。また、若い世代の声が反映されていないことや解決策は自治体頼みであることなど、レポートに対する批判もあります。ですが、少子高齢化が自治体にとって非常に重要な問題であることは否定できないでしょう。

―――住民は、地域のために何かできることはあるのでしょうか?
田中:住民は地方自治を支える中心的なメンバーです。まずは自治体が発行する広報誌やHPなどに目を通し、どのような取り組みが行われているかチェックしてみて下さい。さらに何か要望や提案があったら、是非その声を自治体に届けてみましょう。多くの自治体では、住民からの意見を受け付ける窓口があるはずです。私はこれまで2回、居住する自治体にメールで意見や要望を出したことがあり、担当部局から返信を受けました。

―――へえ、ちゃんと回答してもらえるんですね。
田中:そうなんです。自治体職員の方とお話をする中で様々な事情も分かり、一住民として自治体への信頼が高まるきっかけになりました。自治体にとっても、政策に関心をもつ住民が増えることは、よりよい公共サービスの提供を動機づけられると思います。

―――それでは最後に一言、メッセージをお願いします。
田中「地方自治は民主主義の学校」といわれます。公務員を目指す人はもちろん、民間企業への就職を希望する人も、地域を支える大切な一員です。流通経済大学法学部では、市長や市役所職員をはじめ、地方自治の現場で活躍する実務家からお話をうかがう実践的な授業を展開しています。是非、実学としての地方自治を流通経済大学法学部で学んでみませんか。

―――田中先生、本日はどうもありがとうございました。


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